「好き」がタスクになってしまったー海外旅行サイトオーナーが語る「手放す決断」とM&Aという選択肢
「趣味のブログのM&A売却なんて、自分には関係ない話だ」——そう思っていませんか?
実は、個人が趣味や副業で運営するアフィリエイトサイトやブログも、M&A(事業譲渡)の対象になります。
今回お話をお伺いしたのは、「初めての海外旅行をサポートする」をコンセプトに海外旅行情報メディアを個人で立ち上げ・運営し、サイト売却を成立させた長谷部様。
趣味で続けてきたブログも、ライフステージの変化によって「そろそろ手放すか迷っている」「続けるべきか悩んでいる」という悩みが生まれることがあります。
本記事では、そんなお悩みを持つ方の参考になるようなブログサイト売却のタイミングや手続き、スモールM&Aならではのリアルな流れをインタビュー形式でお届けします。
Q1. 運営されていたメディアの事業内容・特徴や強みを教えてください
運営していたのは「初めての海外旅行をサポートする」をコンセプトに掲げた海外旅行情報サイトです。航空券の取り方から現地の治安情報まで幅広くカバーしていました。
一番の特徴は、他の海外旅行サイトと比べると、治安情報や海外での危機管理など防犯に関するコンテンツが充実していることです。
もう一つの強みは、記事を自分だけでなく実際に海外旅行を経験した方に外注し、レビューを書いてもらうスタイルを取り入れていた点です。ネット上の情報だけに頼らず一次情報を入れることで、読者の役に立つコンテンツを目指していました。
Q2. この事業を始めたきっかけを教えてください
もともとは大学院の頃に時間があったため、よく海外旅行をしていました。
その中で、私自身が海外でちょっと危ない目に遭った経験があり、そこから「防犯ツールを作りたい」と思ったのがスタートです。
ツールを宣伝するのに、ただSNSで告知するよりSEOで集客した方がいいと感じて、ブログを始めました。
最初は本当に純粋に「自分の作ったツールを広めたい」という気持ちだけでした。でも運営しているうちに数字が伸びてきて、それが楽しくなってきたんです。
その後、SEO専門の会社に就職したこともあって、キーワードを意識したアフィリエイトメディアとして本格的に運営していくようになりました。
Q3. M&A・メディア売却を検討したきっかけを教えてください
Googleのコアアップデートで、数字が落ちてしまったことが大きな転機でした。あの時期は私だけでなく、多くのアフィリエイトメディアが影響を受けていたと思います。
上位を保てていたのは、特定のテーマに特化した専門性の高いサイトだけで、私のサイトのように幅広くカバーしているものは厳しい面がありました。
そこから立て直しを試みたんですが、当時は別の仕事もしていたのでサイトだけに全力投球できず…。特化した方向への大きなリニューアルも、時間的にできなくて、結局少し放置状態になってしまいました。
そのタイミングでSidemenさんからご連絡をいただいて。「放置しているなら、誰かに任せた方がいいんじゃないか」と思ったのが正直なところです。
自分ではもう積極的には動かせないけど、ここまで運営してきて捨てるにはもったいない。その気持ちが売却を検討するきっかけでした。
Q4. 弊社の対応や、印象に残ったサポートについて教えてください
正直に言うと、私のほうがちょっとご迷惑をかけてしまった部分もありました。
法人で運営していた時期に体調を崩し、事業の一部譲渡なども重なって、財務データの管理が不十分な状態になってしまいました。それでも担当者の方が嫌な顔ひとつせず、一緒に状況を整理してくれました。
手続きがスムーズにいかない場面もありましたが、都度丁寧に対応いただいたおかげで、最終的に成約まで進めることができました。
Q5. 実際の交渉・譲渡プロセスはいかがでしたか?
私の場合、外注さんへの依頼方法や記事ごとの情報はある程度整理してあったんですが、キャッシュフローに関わる数字の資料(財務資料)が不十分で、そこで少し時間がかかりました。
アフィリエイトサイトや個人ブログのM&A・事業譲渡では、この数字の管理が大事なポイントであるということを、今回のM&Aを通じて知りました。
資料の元となるデータを普段からこまめに記録したり、揃えたりしていれば、もっとスムーズに進んでいたと思います。
買収後は、買い手さんへの引き継ぎも含めてしっかりとサポートいただけました。
Q6. 買い手様の決め手は何でしたか?
価格や条件の折り合いはもちろん大事ですが、それ以上に「海外旅行が好きな人に引き継いでほしい」という思いが強くありました。
メディアのコンセプトへの共感や、テーマへの愛着を持ってくれる方かどうかが、私にとっての最も重要な判断基準でした。
Q7. M&A・サイト売却によってどんなメリットがありましたか?
一番大きかったのは「気持ちが楽になった」ことです。
放置しているとはいえ、心のどこかにずっと「どうにかしなきゃ」というタスクとして残っていたんですよね。それが解消されたのは、思っていた以上にスッキリしました。
経営リソースという観点でいうと、今は別の事業(システム開発・業務管理ツールの開発)に集中できるようになりました。頭の中の「やらないといけないリスト」から一つ消えることで、今やるべきことに向き合えるようになった感覚です。
海外旅行自体は今も趣味として楽しんでいます。「仕事」として向き合わなくていい分、純粋に楽しめるようになりました。趣味でスタートしたものが仕事のタスクになって、また趣味に戻った、という感じです。
Q8. 今後の事業展開について教えてください
新たにメディアを立ち上げる予定は今のところありません。
今は自分の会社(アクステアネット)でシステム開発・業務管理ツールの制作をメインでやっています。
一方で、これまでの経験を活かして、SEOコンサルタントとしていくつかの会社のサポートにも入っています。自分でメディアを立ち上げて上位表示を経験したことで、「実際にやったからこそ話せること」が増えたのは大きかったです。
また、以前から運営している海外情報に関するツール・メディアも継続し、売却サイトとも連携しながら、海外渡航者の安全をサポートするコンテンツを届けていきたいと思っています。海外旅行への思いは、形を変えて続いている感じですね。
Q9. これからM&A・サイト売却を検討する方へのアドバイスをお願いします
一番大事だと実感したのは、「数字をちゃんと管理しておくこと」。
私は途中で会社の状況が変わって、売上や収益のデータが整理できていない期間がありました。M&Aの手続きを進める上で、ここが詰まった一番の原因です。
売却を視野に入れて運営するなら、収益の記録・外注管理の資料・サイトの構造などをしっかりまとめておくことを強くおすすめします。
もう一点は、「ある程度成長したタイミングで売却を検討するのはありだ」ということ。趣味で始めたブログも、育てれば売却できる資産になります。
継続が難しくなったと感じたとき、誰かに任せるという選択肢を早めに持っておくと、判断が迷いにくくなります。
Q10. これからビジネスや副業に挑戦する方へメッセージをお願いします
ブログって、続けることが大事だとよく言われますが、正直続けるのは簡単じゃない。趣味でスタートしても、週に何本も記事を書くようになると、気づいたらそれが「タスク」に変わっていくんです。
私の場合、書くこと自体は嫌いじゃなかったんですが、それでもやっぱり義務感に変わっていく感覚はありました。
だから、これからブログやメディアを始めようとしている方には「本当にそのテーマが好きか?」を最初によく確認してほしいです。好きじゃないと、SEOとして成果が出る前に心が折れてしまうから。
それから、自分一人で全部やろうとしなくていい。私も時間が足りなくなってから外注を活用し始めて、それで続けられた部分もありました。最初から「仕組みとして回す」ことを意識すると、長続きしやすいと思います。
もし万が一続けられなくなったとしても、M&Aという選択肢を頭の片隅に入れておくだけで、気持ちがぐっと楽になります。
よくある質問(FAQ)
※以下は編集部による一般的な情報です。個別の案件によって異なります。
Q. 会社やサイトを売却するまでにどのくらいの期間がかかりますか?
個人ブログやアフィリエイトサイトのスモールM&Aの場合、一般的には2〜6ヶ月程度が目安です。
売上・収益データや外注管理などの資料が整っているほど、デューデリジェンス(運営調査)がスムーズに進み、期間を短縮しやすくなります。資料の準備が不十分な場合は、それ以上かかることもあります。
Q. M&AのDD(デューデリジェンス)とはどんなことをするのですか?
DD(デューデリジェンス)とは、買い手が売り手のサイトや事業の実態を調査するプロセスです。
主に「財務DD」と「法務DD」の2種類があります。財務DDでは収益・費用・キャッシュフローの実態確認、法務DDでは著作権・利用規約・外注契約の適法性などを確認します。
ブログやアフィリエイトサイトの場合は、アクセス数の推移・収益データ・外注構造などが特に重点的に確認される傾向にあります。
Q. スモールM&Aでも仲介会社に依頼したほうがいいですか?
個人や小規模事業者のM&Aでも、仲介会社を活用するメリットは大きいです。買い手の探索・条件交渉・契約書の作成など、専門知識が必要な手続きを代行してもらえるため、トラブルを防ぎやすくなります。また、資料の整え方や適正な売却価格のアドバイスも受けられるため、初めてのサイト売却でも安心して進めることができます。
Q. 売却後、ライターや外注スタッフの雇用・契約はどうなりますか?
ブログサイトや個人メディアのM&A・事業譲渡においては、外注ライターや業務委託スタッフとの契約については、買い手と売り手の間で引き継ぎ条件を協議することが一般的です。継続して関わってもらうかどうかは双方合意の上で決定し、契約書に明記します。関係スタッフへの配慮も含めて事前に仲介会社と相談しておくと安心です。
担当仲介より
長谷部様へのインタビューを通じて、改めて感じたことがあります。M&Aやサイト売却は「大企業だけの話」でも「ビジネスを諦めること」でもない、ということです。
趣味から始まったサイト運営がSEOメディアとして成長し、人生の変化の中で「自分が直接管理できなくなった」時、サイト売却という選択肢は次の人にバトンを渡す建設的なアクションになります。
長谷部様は趣味から始めたサイト運営を通じて、SEOを実践で学び、売却も経験され、今もSEOコンサルタントとして複数の会社のサポートをし、活躍の場を広げています。
バトンを渡すことは、受け取る側にも新たな挑戦の機会を生みます。自分が育てたサイトが次の誰かの挑戦の手段になるというのは、事業を循環させるM&Aならではの価値だと思いました。この機会に担当させていただけたこと、大変嬉しく思います。
M&Aは一つの事業の「終わり」ではなく、次の挑戦者への「引き継ぎ」です。売り手も買い手も、それぞれの次の一歩に伴走することを大切にしています。
【同じ悩みをお持ちの方へ】
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