「売って終わり」じゃない。いいものを作ったから、もっと大きな舞台へ。推薦塾オーナーが選んだ”スケール型”M&Aのリアル
「塾が必要な子がいるのに、地方には塾がない」
その課題意識が、秋田様を起業へと突き動かし、推薦・AO入試専門オンライン塾を7〜8年運営した秋田様。
売却後も自らジョインし、事業をスケールさせる道を選びました。
本業を持ちながらのサイド事業として運営を続ける中で、「自分の力だけでは、届けたい子に届けられる量に限界がある」という壁に直面した秋田様でしたが、選んだのは事業を売って去ることではなく「スケールさせてくれる会社に渡して、自分もジョインしてさらに大きく成長していくこと」
本記事は事業売却をご検討の経営者様はもちろん、
「売ったらそれで終わりでいいのか?」とお悩みの方、
「いいものを作ったからこそもっと大きくしたい。けど自分だけでは今は難しい。」
とお考えの事業者様に参考になるような、M&Aのリアルを学べます。
Q1. 貴社の事業内容、特徴や強みを教えてください。
A.
推薦・AO入試に特化したオンライン個別指導塾を運営してきました。
最大の強みは、生徒一人ひとりの課題に合わせたカスタマイズ指導です。「書く力はあるけど話せない」「スピーチは得意だけど文章が苦手」
推薦入試では受験生ごとに課題がまったく異なります。それを丁寧に見極めて、指導を個別設計していました。生徒の9割近くが地方在住で、「地方にいながら質の高い推薦指導を受けられる場所」として機能していたと思っています。
Q2. 事業を始めたきっかけを教えてください。
A.
大学1〜2年生のころ、学習塾でアルバイト講師をしていたのがきっかけです。
私自身が高校3年時にAO推薦入試を経験していたこともあり、塾内の少人数推薦専用講座を任せてもらいました。
担当した生徒のほぼ全員が合格できたこと、そして何より「これはめちゃくちゃ面白い仕事だ」と感じたのが決定的でした。
当時勤めていた神奈川の塾は都市部の子どもたちが中心で、学習にお金をかけられるご家庭が多かった。一方で、地方にも推薦入試を目指す子はいるのに、指導してくれる塾が存在しない。その構造的な不公平さを何とかしたい。
自分自身も地方出身ということもあり、「自分がやらなければ」という気持ちで起業しました。
オンライン完結にしたのはビジネス的な理由も多少あります。初期投資が少なく、ランニングコストも低い。個人でやるからこそ大手が参入しにくい地方・低価格帯の市場を狙えると考えました。
Q3. M&Aを検討したきっかけを教えてください。
A.
大きな転機というより、じわじわと積み重なったものが「限界」として見えてきた感じです。
本業を持ちながらのサイド事業だったので、どうしてもコミットに制約がありました。「もっと資金があれば教材をブラッシュアップできる。もっと時間があれば生徒数を増やせる」
でも一人ではリソース的に天井が見えていた。
そのとき考えたのが、「自分がやり続けることよりも、スケールさせられる会社と組む方が、この事業にとっても、届けたい子どもたちにとっても良いのではないか」ということでした。
売って去るためではなく、事業をもっと大きくするための手段としてM&Aを捉えるようになったのが、検討のスタートです。
Q4. Sidemenへのご相談のきっかけ、印象に残ったサポートは?
A.
最初は自分で大手の学習塾3社ほどに直接問い合わせていました。ところが「うちはすでに推薦部門があるし、あまり興味ないかも」という反応が続いて。想定していたペルソナが外れていたんです。
そのタイミングでSidemenさんからご連絡をいただきました。過去に他の仲介業者から「探してきます」と言われたまま何も進まなかった経験があったので、正直あまり期待していなかった(笑)
ところが1〜2週間で、具体的な買い手候補を持ってきてくれた。そのスピードには本当に驚きました。「あ、ちゃんと動いてくれている」という安心感が一気に生まれましたね。
Q5. 実際の交渉や譲渡プロセスはスムーズでしたか?
A.
体感的にはとてもスムーズでした。トップ面談、基本合意、DD(デューデリジェンス:買収前に事業内容・財務状況などを詳細に調査するプロセス)が1〜1.5ヶ月、締結まで全部で約3ヶ月です。
私は本業のコンサルでDDの経験があり、以前は売上10億・ディール30億規模の案件に関わったことがあります。あの時は毎日が作業で本当に大変だったので「今回も覚悟しないと」と思っていたのですが、拍子抜けするほどスムーズで(笑)
途中で株式譲渡から事業譲渡への切り替えがありました。
これはDDの過程で、買い手側のガバナンス上のリスクを考慮した結果です。
ただ最終的な売却価格は当初評価額と変わらず対応いただけたので、そこは有り難かったです。買い手の社長がトップ権限で判断を進めてくれたことも、スピードに大きく影響したと思います。
Q6. 買い手を選ばれた決め手は何でしたか?
A.
最初は「大手の学習塾が相手になるだろう」と思い込んでいましたが、実際に話を進める中で、専門資格教育の分野で強みを持つ会社との相性が非常に良かったんです。
決め手は2つです。
1つは、教材のクオリティを合格実績に結びつける力があること。
もう1つは、SEOドメインの強さです。
「あの会社のプラットフォームに乗れば、自分のノウハウが一気に広がる」という確信がトップ面談の段階からありました。先方の担当者も「行けそうな気はします」と言ってくれて、その前向きな反応も決め手になりました。
「売ったあとも自分が関わり続けて、一緒に伸ばしていきたい」という意向を最初から伝えていたのですが、それを先方が歓迎してくれたことも大きかったです。
Q7. M&Aによってどのようなメリットがありましたか?
A.
金銭的なメリットはもちろんあります。
率直に、事業を現金化できたことはプラスでした。
ただ、私にとって一番大きかったのはいいものを作ったという自信があったからこそ、
「渡すべき相手に渡せた」という実感です。
7〜8年育ててきた事業なので、売ったあとに潰れたり放置されたりするのが一番嫌だった。M&Aは「売って終わり」ではなく、自分も売却後に講師・アドバイザーとしてジョインして、さらに事業を大きくしていく入口だと捉えています。
今も毎週定例ミーティングがあり、カリキュラムのアドバイスをしています。「まだ始まったばかり」というのが今の正直な気持ちです。
Q8. 今後の事業展開について教えてください。
A.
推薦入試といえばまず名前が挙がるブランドにまで育てたい、というのが目標です。
今はカリキュラムと教材の整備フェーズで、私もアドバイザーとして週次ミーティングに参加しながら実際の現場にも出ています。
教材が整ったら動画コンテンツの制作も始まる予定で、本格稼働はもう少し先になりますが、楽しみにしています。
ゆくゆくは自分が現場から離れて講師育成側に回れるような体制を作っていきたいですね。売却したことで、一人では絶対に届けられなかった規模に挑戦できる。それがM&Aを選んだ一番の理由だったので。
Q9. これからM&Aを検討する経営者へのアドバイスを。
A.
2つお伝えしたいことがあります。
1つ目は、「伸ばしてくれる相手を選ぶ」こと。
自分が責任を持って育ててきた事業である以上、売ったあとどうなるかを考えた相手選びをしてほしい。シナジーがある会社を選べば、自分もジョインして一緒に大きくできる。「売って終わり」ではなく「売ってからが本番」という発想を持てると、M&Aが全然違うものに見えてきます。
2つ目は、日頃から財務を整えておくこと。
これは私自身の大きな反省です。私は売ることを目的に事業をやってきたわけではなかったので、いわゆる「オーナービジネスらしい経費の使い方」をしていた部分がありました。DDの過程でそこが買い手のガバナンス上のリスクと判断され、株式譲渡から事業譲渡への切り替えにもつながりました。
財務をきれいにしておくこと、ノウハウをドキュメントとして整理しておくこと。
これはM&Aを考えるずっと前から、日常業務として取り組んでおいた方がいい。売らなくても会社にとってプラスになりますし、いざM&Aとなった時に選択肢が広がります。
Q10. これからビジネスを始める方へのメッセージを。
A.
ローコストで始められる時代だからこそ、まず動いてみることが大事だと思います。
そして、「手放すことも成長の手段になる」と頭の片隅に置いておいてほしい。
自分の力の限界が事業の限界である必要はない。いいものを作ったなら、それをもっと大きくできる誰かと組む選択肢がある。
情熱を持って作り続け、届けるべき人に届く仕組みを考え続けることが、起業家としての一番の仕事だと思っています。
FAQ(編集部より:スモールM&Aについてよくある疑問)
Q1. M&Aの成約までどれくらいの期間がかかりますか?
スモールM&Aでは一般的に3〜6ヶ月が目安です。今回のケースのように、買い手のトップが主導して動く場合は3ヶ月以内で完結することもあります。
Q2. DDとは何ですか?
DD(デューデリジェンス)とは、M&A成立前に買い手が売り手の財務・法務・事業内容を詳細に調査するプロセスです。ここで財務の不備が見つかると、契約形式や価格に影響が出ることがあります。
Q3. 株式譲渡と事業譲渡はどう違いますか?
株式譲渡は会社そのものを売買する方法、事業譲渡は特定の事業・資産のみを売買する方法です。財務状況や買い手のリスク判断によって、交渉途中で切り替わるケースもあります。
Q4. 売却後も事業に関わることはできますか?
可能です。今回のように売却後も講師・アドバイザーとして継続関与する形は珍しくありません。むしろ「一緒に育てたい」という売り手の姿勢は、買い手にとっても魅力的に映ることが多いです。
担当仲介より
一番印象に残ったのは、秋田様から「売れて良かった」と安堵した言葉の代わりに出てきた「まだ始まったばかり」という言葉でした。
買い手企業では現在、カリキュラムと教材の整備が進んでおり、強力なSEO基盤との掛け合わせによる集客強化フェーズへ向けて準備が整いつつあるそうです。
M&Aは取引の完結ではなく、新しい伴走の始まり。
「いいものを作ったから、もっと大きな舞台で多くの人に届けたい」
その思いを形にする手段として、M&Aはもっと使われていいものだと感じました。
何より、これからが始まりなのでもっと拡大して自分も成長していこうという姿勢は仲介としても気持ちよく前向きになれるものでした。ありがとうございました!
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